アラフォー奥さんの頭の中

読んでも何の役にも立ちません

おじいさん

よく道でお会いする、名前も知らない近所のおじいさんがいるんだけど、今日も郵便局の帰りにばったり出会った。

 

いつも通り「こんにちは」と軽く挨拶して通り過ぎようとしたら 

「いや、普段は甘い物なんて買わないんだけど、今日は家内の命日なもので…」 

と、尋ねてもいないのに、慌てたように、手に持っていたケーキの箱の説明をしてくれた。

 

年輩の男の人がケーキ屋さんでケーキを買うっていうのはそんなにハードルの高いものなのかな(笑)きっとおじいさんも本当はケーキが食べたいんだ。奥様のお仏壇に供えて、それから「家内が好きだったから」と誰に言い訳する必要もないのにひとしきり言い訳して、それから甘いケーキをほおばるんだろうな。亡くなった奥さんの笑っている顔が見えるようだ。

 

 

このおじいさんで思い出した。

 

15年ほど前。新婚の頃。夫と二人で近所の植物園に出かけたことがある。 

その時、ひとりのおじいさんから写真を撮ってくれと頼まれた。 

分かりました、とカメラを受け取って写真を撮ろうとすると「ちょっと待ってください」とおじいさんは鞄から奥様の遺影を出して、胸に抱えて「はい、お願いします」と。

 

いろいろ尋ねたりはしなかったけれど、(だから私の妄想なのだけど)きっとここは亡き奥様との思い出の場所なのだろう、仲の良いご夫婦だったんだろうな、奥様は幸せだっただろうな等、いろいろ考えながらそのおじいさんにカメラを返して別れた。

 

そして、夫と二人で「私たちもあんな夫婦になりたいね」と話したのだった。

 

今の今まですっかり忘れていた。今のところ、全然「あんな夫婦」にはなれていない(笑)